中国のAI企業Z.aiが、大規模言語モデル「GLM-5.2」を2026年6月17日(日本時間)に正式発表しました。総パラメータ数は約7,530億にのぼり、ソフトウェア開発を評価する複数のベンチマークでGPT-5.5を上回り、コーディング性能を競うランキングでは世界2位につけています。しかもモデル本体はMITライセンスのオープンモデルとして配布され、誰でもダウンロードして使える点が大きな特徴です。
無償で使えるオープンモデルとして登場
GLM-5.2の存在が最初に伝えられたのは、2026年6月13日にAnthropicが「Claude Fable 5」「Claude Mythos 5」のサービスを停止したタイミングでした。当初は「強力なコーディング能力」「100万トークンの入力対応」「長時間タスクの連続実行」という方向性だけが示されていましたが、今回の正式発表で具体的な性能が明らかになりました。
最大の特徴は、モデルウェイト本体がMITライセンスのオープンモデルとして公開されたことです。Hugging Face上の「zai-org/GLM-5.2」から無償で入手でき、企業や個人が自由にダウンロードして検証したり、自社の用途に合わせて微調整したりできます。クラウド経由でしか触れられない最先端モデルが多いなかで、手元の環境で動かせる選択肢を残した形です。
7,530億パラメータでも軽く動くMoE構成
GLM-5.2は、必要な専門家(エキスパート)だけを稼働させるMixture-of-Experts(MoE、専門家混合)と呼ばれる構造を採用しています。総パラメータ数は約7,530億と巨大ですが、1回の推論で実際に動くのは約400億パラメータにとどまり、規模の大きさと処理の軽さを両立させる設計です。
長い文脈を扱う際の効率も工夫されています。複数の疎なアテンション層で計算結果を使い回す「IndexShare」という仕組みにより、100万トークンの広大なコンテキストを処理する場面でも、1トークンあたりの計算量を大きく抑えられるとしています。文脈が長くなるほど計算負荷が跳ね上がる従来の弱点を、構造そのもので緩和しようという狙いがうかがえます。
コーディングと長時間タスクで示した実力
Z.aiが前面に押し出しているのが、コーディングと長時間タスクの性能です。実際の不具合修正能力を測る「SWE-bench Pro」では62.1のスコアを記録し、GPT-5.5の58.6を上回りました。難度の高い「FrontierSWE」でも74.4パーセントとなり、GPT-5.5の72.6パーセントを超え、Claude Opus 4.8の75.1パーセントに肉薄しています。
モデル名を伏せて人間が品質を評価するブラインド方式の評価でも高評価でした。コーディング性能を比べる「Code Arena」では、Claude Opus 4.7や最新のClaude Opus 4.8を抑えて世界2位につけています。一部の比較では、サービスを終えたばかりの「Claude Fable 5」を上回ったとの評価もありました。ただし、これらの数値の多くはZ.aiや各種ランキングが公表したものである点は、念のため押さえておきたいところです。
使い方とコスト、注意したい点
GLM-5.2は、Z.aiのチャットAIサービスやAPIから使えるほか、「ZCode」「Claude Code」「OpenCode」など20を超えるコーディング環境に対応しています。普段使っている開発ツールにそのまま組み込みやすい点は実用的です。コスト面でも、トークンあたりの料金はGPT-5.5のおよそ6分の1とされ、長時間にわたるエージェント処理を回す用途では負担を抑えやすくなります。
一方で、注意も必要です。オープンモデルとして手元で動かす分には問題になりにくいものの、Z.aiがホスティングするAPIを業務で使う場合は、入力データの扱いをめぐって中国のデータ規制が関わる可能性が指摘されています。機密性の高い情報を扱う企業では、自前環境での運用か外部APIの利用かを慎重に見極めたいところです。
まとめ
GLM-5.2は、7,530億パラメータの大規模モデルをMITライセンスのオープンモデルとして公開し、コーディングと長時間タスクでGPT-5.5を上回る実力を示しました。Code Arenaでは世界2位につけ、最新のClaude Opusに迫る場面もあります。手元で動かせる高性能モデルとして開発者には有力な選択肢になりますが、ホスト型APIを業務利用する際のデータの扱いには目を配っておきたいところです。
