イーロン・マスク氏が率いるxAIは2026年7月1日、プログラミングの知識がなくてもAIの音声エージェントを作成できる「Voice Agent Builder」をベータ公開しました。Webブラウザ上で電話応対の流れを言葉で書くだけで、最短2分ほどで実際に受け答えするAIが立ち上がります。同社の音声モデル「Grok Voice」を土台に、顧客対応や予約受付、個人向けアシスタントといった用途を想定した仕組みです。本記事では、その機能と料金、企業向けの安全対策を整理します。

約2分でAI音声エージェントを構築

Voice Agent Builderの最大の特徴は、コードを一切書かずに使えるノーコード(プログラミング不要でアプリや処理を組み立てる方式)である点です。専門の開発チームを持たない事業者でも、Webブラウザから設定を進めるだけで、電話の受け答えをこなすAIを用意できます。

作り方はシンプルです。まず「どんな順番で会話を進めてほしいか」を、ふだんの言葉で文章にして書きます。そこに社内マニュアルなどの資料や、AIに使わせたいツール、逸脱を防ぐためのガードレール(AIの応答範囲を制限する安全策)を紐づけていくと、ゼロの状態から2分ほどで動くエージェントが完成します。土台となるGrok Voiceは応答までの遅れが1秒未満に抑えられており、人と話しているような自然なやり取りを狙っています。

80種類以上の音声と自分の声のクローン

エージェントに持たせる声は、あらかじめ用意された80種類以上のボイスから選べます。加えて、2分ほどの音声を録音すれば、自社ブランドの声を再現したクローン音声を作ることもできます。対応言語は25以上とされており、多言語での応対も視野に入っています。

xAIによると、Voice Agent Builderは音声をそのまま音声で処理する「スピーチ・トゥ・スピーチ」の経路をGrok Voiceと密に結びつけて設計しているといいます。音声認識、文章生成、音声合成の3つを別々に組み合わせる従来の構成に比べ、遅延や不自然さを減らしやすいという考え方です。

電話番号やSIP、外部サービスとの連携

新規のアカウントには無料の電話番号が1つ付与され、最初のテスト通話からそのまま本番の受電まで使えます。すでに使っている番号を活かしたい場合は、主要な電話事業者の回線をSIP(インターネット経由で電話をつなぐ通信の仕組み)で直接接続できます。

外部サービスとの連携も豊富です。GmailやOutlook、Google カレンダー、Linear、Notion、OneDriveなどとつなぎ、予定の確認や情報の記録を会話の中で処理させられます。さらに、独自のModel Context Protocol(MCP、アプリやデータとAIを直接つなぐ規格)にも対応しており、社内のデータベースや顧客管理システム、各種APIを組み込んで、自社の業務に合わせた音声エージェントに仕立てられます。

料金と企業向けの安全機能

料金は利用した通話時間に応じた従量制で、1分あたり0.05ドル(約8円)です。80種類以上の音声はこの料金に含まれ、別途のプラットフォーム利用料はかかりません。無料付与された番号で電話回線を使う場合は、これに1分あたり0.01ドル(約1.6円)が上乗せされます。※1ドル=161円換算(2026年7月4日時点)

企業での利用に向けた機能もそろえています。主要な電話事業者向けのSIP接続に加え、応答範囲を細かく設定できるガードレール、そしてSOC 2やHIPAA適格性、GDPRといった各種のコンプライアンス対応が用意されています。通話中にAIが個人情報などの取り扱いに注意すべき情報を読み上げないよう制限をかけることもでき、顧客対応を自動化しつつ、情報の取り扱いに配慮できる設計です。

まとめ

xAIのVoice Agent Builderは、ノーコードで最短2分ほどという手軽さと、80種類以上の音声やSIP接続、MCP連携といった実務向けの機能を併せ持つ点が特徴です。1分あたり0.05ドルからという明快な従量課金も、導入のハードルを下げています。現時点ではベータ版のため、実際の通話品質や日本語での使い勝手は今後の提供拡大を見ながら確かめたいところですが、電話業務の自動化を検討する事業者にとって選択肢の1つになりそうです。