Slack が8月20日、AI コーディングエージェントとチームが同じ場所で開発を進められる「Slack Code」を公開しました。専用の「コードチャンネル」に会話・コードの差分・動作プレビューをまとめて置き、エンジニア以外のメンバーもその場で確認して口を出せる作りになっています。Slack のどのプランでも利用できます。

エージェントとの作業を、個人のタブから引きずり出す

コーディングエージェントを使った開発は、これまで基本的に個人の作業でした。ターミナルやブラウザのタブの中でひとりがエージェントとやり取りし、結果だけが後からチームに共有される。この形だと、途中でどんな判断があったのか、なぜその実装になったのかが本人以外には見えません。レビューは後回しになり、引き継ぎのたびに文脈を作り直す手間が発生します。

Slack Code は、その作業場所そのものをチームの側に移そうという提案です。開発をチャンネルの中で行えば、やり取りは既定で全員に見える状態になり、人からエージェントへ、人から人へと文脈がそのまま引き継がれていきます。Slack の EVP 兼ゼネラルマネージャーである Rob Seaman 氏は、AI は誰かが別のタブでひとりで使うものではなく、チームの働き方に組み込まれて初めて価値が出ると述べています。

コードチャンネルは1案件につき1つ、終われば自動で片づく

コードチャンネルは1つのプロジェクトに1つ対応します。通常のチャンネルで会話しているときにコーディングエージェントをメンションすると、そのタスク用のコードチャンネルが自動的に立ち上がる仕組みです。作業が終わればチャンネル側が自分でアーカイブに入り、記録は監査ログとして残ります。サイドバーが使い捨てのチャンネルで埋まっていく心配は要らない、という設計です。

チャンネルの中は用途ごとのタブに分かれており、会話、進め方の計画、コードの差分、実際に動く HTML のプレビューをそれぞれ追えます。差分表示は元の行に取り消し線を引き、その横に新しい行を並べる、エンジニアが見慣れた形式です。これまで専用ツールの中に閉じていたレビューが、チャンネルにいる全員の目の前に出てくることになります。エージェントの振る舞いはAPIで調整でき、アカウントの自動発行やユーザー認証、作業の一部自動化を自社の運用に合わせて組み込めます。

手を動かすのがエンジニアだけではなくなる

Slack が挙げている使い方の例が分かりやすいので紹介します。プロダクトマネージャーがチャンネルで不具合の報告を見つけたとき、エンジニアの空きを待たずにコーディングエージェントへ修正の相談を持ちかけます。エージェントはコードチャンネルを立ち上げ、それまでのやり取りやスクリーンショット、共有済みの資料に目を通したうえでコードを提案します。そこにエンジニアを呼んで差分とプレビューを確認してもらい、問題がなければプルリクエストの作成とマージまで進める、という流れです。

チケットも会議も挟まないぶん速いのですが、同時に歯止めも用意されています。チャンネルにいる人は誰でも、エージェントの動きがずれていると感じた時点で一時停止や方向転換、停止を指示できます。本番環境への反映のような影響の大きい操作では、エージェントが作業内容をまとめて担当者の承認を求める形になり、人の判断を通さずに進むことはありません。権限やセキュリティは Slack が元々持っている管理設定をそのまま引き継ぐため、情報システム部門が新しい基盤を用意する必要もないとしています。

主要なコーディングエージェントが出そろっている

今回の提供開始時点で対応しているのは、Anthropic の Claude、Cognition の Devin、GitHub の Copilot、ChatGPT、そして Vercel のエージェントです。いずれも Slack Code のコードチャンネル API を使って参加しており、利用にはそれぞれのエージェント側の契約が別途必要になります。

Slack はこの API を今後より広い開発者に開放する方針も示しています。そうなればソフトウェア開発に限らず、マーケティング施策の立ち上げや法務の文書レビューといった仕事でも、独自のエージェントをチャンネルに呼び込めるようになります。あわせてエージェント関連の使い勝手も変わりました。エージェントとのダイレクトメッセージはスレッドに名前が付いて会話を再開しやすくなり、新設の Agents タブではエージェントの一覧や進行中のセッションの状態確認、途中停止がまとめて行えます。Lovable や n8n、LangChain などで作ったエージェントを数クリックで Slack に追加できる導線も用意されました。

まとめ

Slack Code は、AI に書かせたコードをどこでレビューするかという問題に、チャットの側から答えを出した機能です。エージェントの性能を競うのではなく、その成果物をチームの目に触れる場所へ置き直すという発想は、導入する側にとって現実的な落としどころに見えます。開発以外の業務へどこまで広がるかは、API 開放後の様子を見てからの判断になりそうです。