アメリカのAI企業Poolsideが、独自開発の大規模言語モデル「Laguna M.1」をオープンモデルとして公開しました。これまで有料のAPI経由でしか使えなかった最上位モデルのウェイトが、利用条件のゆるいApache 2.0ライセンスで誰でもダウンロードできるようになりました。コミュニティの手で量子化された版はメモリ128GBのMacでもローカル動作し、性能はフランス製モデルを上回る一方、躍進する中国製のオープンモデルには一歩及ばないという立ち位置です。

有料APIから一転、最上位モデルを無償公開

Poolsideは、ソフトウェア開発に特化したAIを手がけるアメリカの新興企業です。同社は2026年6月18日、自社で最も高性能とするLaguna M.1のモデルウェイトを公開しました。入力できる文脈の長さは256Kトークンに達し、学習済みのベース版と、用途に合わせて調整した事後学習版の両方が、AIモデルの共有サイトHugging Face上でApache 2.0ライセンスのもと配布されています。

Laguna M.1は新顔ではありません。Poolsideは2026年4月28日に、このLaguna M.1と小型のLaguna XS.2を同時に発表しています。当初は小型のXS.2だけをオープンモデルとして公開し、上位のLaguna M.1はAPI経由で使う有料製品として展開していました。今回の発表は、これまで収益化の柱だった最上位モデルの中身を一転して無償開放するもので、クラウド経由でしか触れられない最先端モデルが多いなか、手元で動かせる選択肢を増やす動きと言えます。

総2,250億・実働230億パラメータのMoE構成

Laguna M.1は、総パラメータ数が約2,250億にのぼる大型モデルです。ただし1回の推論で実際に動くのは約230億パラメータにとどまります。これは、入力に応じて必要な専門家(エキスパート)だけを稼働させるMixture-of-Experts(MoE、専門家混合)と呼ばれる構造を採用しているためで、規模の大きさと処理の軽さを両立させる狙いがあります。

同時に公開済みだった小型のLaguna XS.2は、総パラメータ数が約330億・実働約30億と、より気軽にローカルで動かせる位置づけでした。今回オープン化されたLaguna M.1は、その上位として高い性能を担う中核モデルにあたります。

ベンチマークでは仏モデルに勝ち、中国勢には届かず

Poolsideは、Laguna M.1を他社の主要モデルと比べたベンチマーク結果も示しています。比較対象に挙げられたのは、フランス製のDevstral 2(123Bの密結合型)、中国製のGLM-4.7やDeepSeek-V4-Flash、Qwen3.5、そしてAnthropicのClaude Sonnet 4.6です。

結果を見ると、Laguna M.1はフランス製のDevstral 2を上回りました。一方で、オープンモデルで存在感を強める中国製のDeepSeek-V4-FlashやQwen3.5には、スコアで及びませんでした。欧米の開発元がオープンモデルで中国勢を追う構図がそのまま表れた形です。なお、これらの数値の多くは開発元や各種ランキングが公表したものである点は、念のため押さえておきたいところです。

128GBのMacで動く量子化版も登場

公開後はコミュニティの手も早く、すでに複数の量子化モデルがHugging Face上に登場しています。なかでも3ビットに量子化した「Laguna-M.1-MLX-Q3」は、Apple Silicon搭載のMacでローカル実行できることが報告されました。具体的には、ユニファイドメモリを128GB積んだM3 Max搭載のMacで、毎秒およそ26トークンの生成速度、ピーク時で約100GBのメモリ使用という動作例が示されています。

巨大なモデルでも、量子化と省メモリ技術を組み合わせれば、データセンターではなく1台の高性能なMacで動かせることを示した例です。ただし128GBのメモリを積んだMacは高価な構成にあたるため、誰でも気軽に試せるわけではない点には留意が必要です。それでも、外部のサーバーやAPI利用料に頼らず手元で最先端級のモデルを動かせる余地が広がったことは、開発者にとって魅力的な変化です。

まとめ

Poolsideは、有料APIで提供してきた最上位モデルLaguna M.1を、総2,250億パラメータのまま、利用条件のゆるいApache 2.0ライセンスのオープンモデルとして公開しました。性能はフランス製モデルを上回るものの、躍進する中国製オープンモデルには届かないという現実的な立ち位置です。一方で、量子化版が128GBのMacでローカル動作する点は、クラウドに頼らずに高性能モデルを使いたい開発者にとって見逃せません。欧米と中国がオープンモデルの主導権を競うなか、選択肢が一つ増えた意味は小さくないと言えるでしょう。