Palantirは、NVIDIAのオープンモデル「NVIDIA Nemotron」を使い、米国の政府機関向けに安全なAIを動かす新しい基盤を発表しました[1]。外部ネットワークから完全に切り離した「エアギャップ」環境にフロンティア級のモデルを持ち込み、各機関が自前のインフラで動かし、学習させ、モデルそのものを所有できるようにするのが特徴です。クローズドな環境でこそオープンモデルが効く、という逆説的な狙いがあります。

オープンモデルを機密環境へ持ち込む

今回Palantirが公開したのは、NVIDIA Nemotronのオープンモデルを土台に、政府機関の業務に合わせた専用モデルを構築する仕組みです[1]。NVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティング上で、外部の安全でないネットワークから隔離されたエアギャップ環境(物理的にも論理的にも切り離された閉域)にモデルを展開します[1]。

政府機関の業務は、商取引・エネルギー・医療・農業・教育・交通など、民間企業の事業と重なる領域が多くあります[1]。米連邦政府の文民職員は約300万人にのぼり、NVIDIAはこれを「世界最大級の企業の一つ」と位置づけます[1]。多分野にわたる複雑な行政サービスをAIで効率化し、現場の判断を後押しするのが今回の構想です。

NVIDIA Nemotronは、重み(モデルのパラメータ)・学習データ・学習手法までを公開したオープンモデル群で、自律的に動くAIエージェント向けに設計されています[2]。最新の「Nemotron 3」はNano・Super・Ultraの3種類で構成され、用途や処理量に応じて使い分けられます[2]。公開された重みは導入前に各組織が検証でき、機密環境に持ち込んだうえで自社データに合わせて調整できる点が、今回の用途と噛み合います。

「主権AI OS」がデータと所有権を握る

モデルを安全に運用する土台となるのが、Palantirの「Sovereign AI Operating System(主権AI基盤)」です[1]。同社のAIP・Ontology・Foundry・Apolloの上に構築され、機密環境への展開に必要な運用とデータ認可の層を担います[1]。明示的なデータ認可、設計レベルで強制される隔離、そして全操作の監査可能性が中核に据えられています[1]。

各機関は、調整したNemotronを自前のインフラで動かし、自分たちのデータで学習させ、できあがったモデルを重みごと完全に所有できます[1]。モデルの重みには、その組織の運用ノウハウが刻み込まれるため、外部に預けずに手元へ留める意味は小さくありません。運用しながら新しいデータとフィードバックでモデルを継続的に改善する「データの好循環(データフライホイール)」も生まれ、性能を高めつつ、データとモデル、監査ログを利用側の管理下に置き続けられるとしています[1]。企業向けの本格運用では、別途「NVIDIA AI Enterprise」ソフトウェア群が下支えします[1]。

オープンモデルが生む信頼・制御・低コスト

NVIDIAは、オープンモデルがもたらす価値を信頼・制御・コストの3点で整理しています[1]。

まず信頼は、透明性から生まれます。第三者がモデルを独立して検証できるため、一つの組織だけでは見逃しがちな脆弱性やバイアス、意図しない挙動を発見しやすくなり、改善につなげられます[1]。次に制御です。企業や政府、開発者がモデルを自分たちの用途に合わせて改変・微調整でき、クローズドなモデルではデータ保護や規制に抵触しかねない金融などの分野でも展開できるとしています[1]。最後にコストで、すでに約3分の2の企業がオープンモデルを利用し、その費用対効果を評価していると同社は説明します[1]。規模を拡大しても破綻しにくいAIを組み上げるうえで、コスト効率は重要な要素になっています。

オープンソースは、ARPANETやUNIX、C言語、Linux、GitHub、Dockerと続いてきた米国の技術的リーダーシップの柱でもありました[1]。今回の取り組みは、その系譜にあるオープンモデルを国家安全保障という最も機微な現場へ広げる試みだといえます。

まとめ

PalantirとNVIDIAは、Nemotronのオープンモデルをエアギャップ環境へ持ち込み、米政府機関が自前のインフラでモデルを動かし、学習させ、重みごと所有できる基盤を打ち出しました。Palantirの主権AI基盤がデータ認可・隔離・監査を担い、透明性による信頼、自社用途への制御、オープンモデルによる低コストを訴求します。もっとも、これはPalantirとNVIDIAが描く構想でもあり、機密性と成果をどこまで両立できるかは、今後の実運用での検証にかかっています。

出典:https://blogs.nvidia.com/blog/palantir-secure-ai-us-agencies-nemotron-open-models/

出典:https://www.nvidia.com/en-us/ai-data-science/foundation-models/nemotron/