OpenAIが、リアルタイム音声対話向けの新モデル「gpt-realtime-2.1」と「gpt-realtime-2.1-mini」をAPIで提供開始しました。注目は小型のminiで、価格を従来のgpt-realtime-miniから据え置いたまま、応答前に内部で考える推論機能とツール呼び出しに対応しました。あわせてRealtime系の音声モデル全体で、体感遅延の指標となるp95レイテンシが25%以上短縮されています。電話応対や音声アシスタントを低コストで実用化したい開発者にとって、見逃せないアップデートです。
上位版とmini、2つのモデルの位置づけ
今回追加されたのは性格の異なる2つのモデルです。上位のgpt-realtime-2.1は、従来のGPT-Realtime-2を更新したフラッグシップにあたります。英数字の聞き取り精度が上がり、型番や電話番号のような「8-3-5-7-1」といったコードの聞き間違いが起きにくくなりました。無音やノイズへの対処、ユーザーが途中で話をさえぎった際の振る舞いも改善され、推論の深さを調整できるspeech-to-speech(音声から音声への直接応答)に対応します。
一方のgpt-realtime-2.1-miniは、リアルタイム音声向けの小型推論モデルという位置づけです。ライブ接続で音声とテキストの入力に応答し、速度とコスト効率を重視する用途に向けます。miniクラスに推論とツール呼び出しが降りてきたことが、今回の発表の中心と言えます。
Realtime APIは音声認識と音声合成を別々のシステムでつなぐのではなく、1つのモデルで音声の処理から生成までを完結させる設計です。これにより遅延を抑えつつ、声のニュアンスを保ったまま応答できます。ブラウザーからはWebRTC、サーバー側の処理はWebSocket、電話網との接続はSIPと、経路も一通りそろっています。
「考えてから話す」推論が音声エージェントの弱点を解消
音声エージェントには、外部の関数(ツール)を呼び出している間に黙り込んでしまうという定番の課題がありました。無言の時間が続くとユーザーは通話が切れたと思って話しかけ直してしまい、処理が中途半端になったり会話の状態が混乱したりします。
推論に対応した新モデルでは、「これから注文状況を確認しますね」とひと言添えてから関数を実行する、といった振る舞いが可能になりました。作業中も話し続けられるため、複数ステップにまたがる音声タスクでも会話が破綻しにくくなります。
推論の深さ(reasoning effort)はminimal、low、medium、high、xhighの5段階から選べます。既定値はlowで、簡単なやり取りでは遅延を抑えられます。深くするほど応答は賢くなる一方、遅延と出力トークンが増えるため、OpenAIは本番の音声エージェントではまずlowから始めることを推奨しています。
遅延は25%以上短縮、キャッシュで料金も大幅割引
リアルタイム音声で重要なのは平均値ではなく「遅いときにどれだけ遅いか」です。今回の改善では、応答の遅い側5%を示すp95レイテンシがRealtime系音声モデル全体で25%以上短縮されました。キャッシュ機構の改良によるもので、ユーザーが実際に感じる引っかかりが減る種類の改善です。
キャッシュは料金面でも効いてきます。キャッシュ済みの入力トークンは大幅な割引価格で課金され、gpt-realtime-2.1-miniの音声入力は通常100万トークンあたり10ドル(約1,620円)のところ、キャッシュ済みなら0.30ドル(約49円)まで下がります。システムプロンプトは最初のターン以降キャッシュされるため、長いセッションほど恩恵が大きくなります。
料金は上位版の約3分の1、使いどころは
音声出力の料金は、miniが100万トークンあたり20ドル(約3,240円)、上位のgpt-realtime-2.1が64ドル(約1万400円)と、およそ3倍の開きがあります。音声入力もminiが10ドルに対して上位版は32ドル(約5,200円)です。推論とツール呼び出しという中核機能はminiでも使えるため、多少の能力差を許容してコストを下げるという選択が現実的になりました。
想定される用途としては、請求内容の問い合わせにアカウント照会ツールを組み合わせるカスタマーサポート、日時を1文字ずつ確認しながら予約を変更するスケジュール調整、スマホアプリに組み込む音声アシスタント、現場作業員が部品番号を読み上げて記録する業務用途などが挙げられます。特に英数字の認識改善は、型番や伝票番号を扱う業務システムで効果を発揮しそうです。
※1ドル=約162円換算(2026年7月9日時点)
まとめ
gpt-realtime-2.1シリーズは、上位版の聞き取り精度と会話の自然さを高めつつ、miniに推論とツール呼び出しを価格据え置きで持ち込んだアップデートです。p95レイテンシの25%以上の短縮とキャッシュ割引も合わせ、音声エージェントを「試作」から「本番運用」へ進めるための材料がそろってきました。音声対話サービスの開発を検討しているなら、まずminiのlow設定から試してみる価値がありそうです。
