NVIDIAは、米国のロスアラモス国立研究所(LANL)が新たに導入する3台のスーパーコンピューター「Mission」「Vision」「Veritas」に、同社初の単体CPU「Vera」が採用されると発表しました[1]。3台はいずれもHPEと共同で構築され、科学研究に特化した処理基盤として2027年の稼働を見込みます。研究所での実測では、Vera CPUが従来のx86系スーパーコンピューターに対して最大7倍の性能を示しており、計算科学の現場にCPUの新しい選択肢が広がりつつあります。

科学向けに3台、Vera Rubinプラットフォームで構築

3台のスーパーコンピューターは、HPEの「Cray Supercomputing GX5000」アーキテクチャと、NVIDIAの「Vera Rubin」プラットフォームを組み合わせて構築されます[1]。Vera Rubinは、CPUの「Vera」、GPUの「Rubin」、そして高速なネットワーク技術「Quantum-X800 InfiniBand」をまとめた構成で、計算と通信を一体で高速化するのが狙いです。

中核となる「Mission」は、Vera Rubinを使ったGPUノードに加え、GPUを伴わない単体のVera CPUを2,300基組み込みます[1]。Missionは2027年の稼働を予定しており、米国家核安全保障局(NNSA)の先進シミュレーション・計算プログラムにおける5台目の先進技術システムとして、現行機「Crossroads」を置き換え、国家安全保障に関わる機密ワークロードを担います[1]。

「Veritas」は、Vera Rubinノードを補う形でおよそ1,150基の単体Vera CPUを搭載します[1]。研究所が独自に進める研究開発プログラムを支え、科学向けのエージェントAIを加速する役割を持ちます。より大規模なシステムを構築する前段として、新しい技術を検証する場にもなります。3台目の「Vision」も2027年の稼働予定で、材料科学や原子核科学、エネルギーのモデリング、生物医学研究、AIといった基礎科学の幅広いテーマに開かれた計算資源として使われます[1]。Mission・Visionの2台はHPEが構築を担うことを、HPE自身も明らかにしています[2]。

x86比で最大7倍、Vera CPUの実力

今回の採用を後押ししたのが、研究所が実際の科学計算で測ったVera CPUの性能です。LANLの検証では、科学研究用のAI基盤「URSA」のワークロードにおいて、Vera CPUは現行機Crossroadsに使われているx86系CPUの7倍の性能を発揮しました[1]。

オープンソースのモンテカルロ法による熱輸送シミュレーションツール「Branson」を使った初期テストでも、VeraはCrossroadsのx86系CPUを3倍以上上回っています[1]。こうした結果を支えるのは、NVIDIAが自社開発した「Olympus」コアや、低消費電力の「LPDDR5」メモリ、チップ内部を高速につなぐファブリックといった設計上の工夫です。

NVIDIAによれば、1基のVera CPUは1ソケットのx86系CPUに対して3倍以上の性能を持ち、コアあたりのメモリ容量で4倍以上、ノードあたりでは6倍のメモリを備えるとしています[1]。CPU単体の演算能力だけでなく、大量のデータを抱えながら処理を進める科学計算に向いた構成だといえます。これらのシステムは、ハードウェアの設計者やシステムソフトウェアの開発者、各分野の科学者、計算機科学者、応用数学者が一体で設計を詰める「コデザイン」によって作られており、抽象的なベンチマークだけでなく実際の研究ワークロードを起点に最適化された点が特徴です[1]。

科学を自律的に進める「エージェントAI」とURSA

3台のスーパーコンピューターが見据えるのは、科学研究そのものを自律的に進めるエージェントAIの活用です。研究者は、仮説を立て、使う道具を選び、シミュレーションを実行し、出てきた結果を分析して次の一手を練り直す、という一連の流れをAIエージェントに任せられるようになります[1]。

その中心にあるのが、LANLが公開で開発を進める「URSA(Universal Research and Scientific Agent)」です。仮説の発案から実験計画、シミュレーションの実行、結果の分析までを支える、モジュール式でフィードバックを取り込みながら動くAIフレームワークで、すでに既存機「Venado」で稼働しており、今後はMissionやVisionでも動かす計画です[1]。

今回の取り組みは、突然始まったものではありません。LANLとNVIDIAは、CPU分野で「Grace」から「Vera」へと10年以上にわたって協業を重ね、研究所のシミュレーション向けに設計を深く擦り合わせてきました[1]。新しい3台は、2024年に導入されたHPE Cray EX機「Venado」、すなわちNVIDIAの「GH200 Grace Hopper Superchip」と「Grace CPU Superchip」を載せたシステムの延長線上にあります[1]。

まとめ

NVIDIAの単体CPU「Vera」が、ロスアラモス国立研究所の新スーパーコンピューター「Mission」「Vision」「Veritas」に採用されました。HPEと共同で構築し、2027年の稼働を見込みます。実測ではx86系CPU比で最大7倍という性能を示し、科学研究を自律的に進めるエージェントAIや大規模シミュレーションを支える土台として位置づけられています。GPUで存在感を高めてきたNVIDIAが、CPUの分野でも科学計算という重要な現場に足場を広げた格好です。

出典:https://blogs.nvidia.com/blog/nvidia-vera-cpu-los-alamos-national-laboratory/

出典:https://www.hpe.com/us/en/newsroom/press-release/2025/10/hpe-to-build-mission-and-vision-supercomputers-for-los-alamos-national-laboratory-in-collaboration-with-nvidia-to-support-ai-research-and-national-security.html