NVIDIAが、自社のサーバー向けCPU「Vera」を、次世代のCPUとGPUを設計するためのEDA(電子設計自動化)工程に投入したと明らかにしました。半導体設計ツールで知られるCadence、Synopsysと協力してアプリを最適化し、検証作業の一部で最大1.5倍の高速化を確認したとしています[1]。自社のチップで次の自社チップを作る、という循環を回す狙いです。

GPU全盛の設計現場でも、CPUが効く工程がある

現代のチップ設計は、より高度なCPU・GPU・AIシステムを目指すほど複雑さが増していきます。製造にたどり着くはるか前の段階で、エンジニアは何年もかけて動作を検証し、コーナーケースを洗い出し、数千回の反復を通じて設計を磨き込みます[1]。

このうちシミュレーション・検証・実装の工程は半導体開発の中心を占めます。GPUとAIは設計の多くの場面を高速化してきましたが、論理シミュレーション、形式的検証、デジタル実装の一部は、いまなおCPUの性能に強く依存します。個々のコアの速さ、効率的なメモリー構成、全体のスループットが効いてくる領域だからです[1]。

そのためCPUのアーキテクチャは、設計チームがどれだけ速く設計を検証し、代替案を試し、テープアウト(設計データの製造引き渡し)へ進めるかを左右する要素になります。GPUの話題が先行しがちなAI時代の設計現場でも、CPUの底力が問われる工程が残っているというわけです。

CadenceとSynopsysのツールで最大1.5倍

NVIDIAの初期テストでは、主要なEDAアプリを対象に効果を測りました[1]。

1つはCadenceの形式的検証プラットフォーム「Jasper」です。スマートプルーフ技術と機械学習を使い、設計サイクルの早い段階でバグを見つけて修正し、検証の生産性を高めるツールです[1]。もう1つはSynopsysの「VCS」で、製造前に複雑なチップ設計をシミュレーションして検証する高性能な機能検証ソリューションです。テストでは両ツールとも同じコア数で実行されました[1]。

その結果、いずれも選ばれたワークロードで最大1.5倍の性能向上を示したとしています[1]。NVIDIAはベンチマークの数字にとどまらず、アプリのプロファイリングやソフトウェア最適化、システム全体のチューニングで両社と密接に取り組み、より広い範囲の工程で生産性を高めていくと説明しています[1]。もっとも、これらはNVIDIAが自社テストで示した数値です。比較条件や設定の詳細までは公開されておらず、他の環境でそのまま再現される保証はない点には注意が必要です。

Vera CPUを設計工程全体に展開

投入されるVera CPUは、独自コア「Olympus」を88基組み合わせ、高効率のLPDDR5Xメモリーサブシステムと第2世代の「NVIDIA Scalable Coherent Fabric」を備えます[1]。1コアあたりの高い性能、広いメモリー帯域、安定した低遅延を、負荷の重い設計アプリ向けに引き出す構成です。VeraはもともとAI工場向けとして2026年3月に投入されたCPUで、今回はその活躍の場を自社の設計現場にも広げた形です[1]。

こうした特性は、遅延に敏感な処理と、計算機群をまたぐ大規模な回帰テストが混在するワークロードで特に効いてきます[1]。実行が速くなれば個々の検証にかかる時間が縮まり、スループットが増えればエンジニアは同じ開発期間の中でより多くの設計案を評価し、より多くの検証を終えられます。設計の反復回数がそのまま製品の完成度に響く世界では、この差が積み重なると大きな違いになります。

自社チップで次のチップを作る循環

チップ設計では、アーキテクチャとマイクロアーキテクチャを定めた後、その動作の多くをRTL(レジスタ転送レベル)で記述します。そこから論理シミュレーション、形式的検証、回帰テスト、デジタル実装といった複数の工程が連携し、製造可能なシリコンへと落とし込んでいきます[1]。

これらの工程は互いに結びついているため、検証のスループットが上がると問題を早い段階で見つけやすくなり、後工程での高くつくやり直しを減らせます[1]。NVIDIAが自社の設計工程全体にVeraを展開する背景には、「それぞれの処理に最も適した計算基盤を割り当てる」という考え方があります。EDAではGPUとAIが多くのアルゴリズムを高速化する一方、重要なシミュレーション・検証・実装は高性能CPUが担い、両者を組み合わせて設計サイクル全体を速めるという整理です[1]。

NVIDIAは自社のCPUで自社の次世代CPU・GPUを設計することで、シリコン設計とソフトウェア最適化、システム工学の間に継続的なフィードバックの循環を作り出すとしています[1]。今後はVeraを土台に、「Rigel」コアを搭載する次世代の「Rosa CPU」へと発展させる計画です[1]。関連する取り組みは、2026年7月26日から29日まで米カリフォルニア州ロングビーチで開かれる設計自動化の国際会議「DAC 2026」でも紹介されます[2]。

まとめ

NVIDIAは、自社のVera CPUを次世代CPU・GPUの設計に使うEDA工程へ投入し、CadenceとSynopsysの検証ツールで最大1.5倍の高速化を示しました。88基のOlympusコアを持つVeraは、CPU性能が効く形式的検証やシミュレーションを担い、GPUやAIと役割を分担します。自社チップで次のチップを作る循環を回す狙いで、次はRigelコアの「Rosa CPU」が控えます。示された性能値はベンダー側の発表であり、第三者の検証を待つ姿勢は必要です。

出典: https://blogs.nvidia.com/blog/vera-cpu-eda/

出典: https://www.nvidia.com/en-us/events/dac/