NVIDIAは、次世代AIインフラ「Rubin」世代で、システム全体を液体だけで冷やす100パーセント液冷を業界で初めて実現したと明らかにしました[1]。冷却液をあえて45℃まで上げて運用する設計が特徴で、ホットタブのお湯より熱いこの温度こそが省エネルギーの鍵になります。データセンターの電力と水の使用量を大きく減らす狙いがあり、AIの計算需要が膨らむなかで効率を底上げする技術として注目されます。

冷却液を45℃まで上げる発想の転換

ホットタブのお湯は38〜40℃ほどで、多くの人が15分ほどしか浸かっていられない温度です。NVIDIAの最新AIサーバーは、冷却液をそれより熱い最大45℃(華氏113度)まで上げて動かせます[1]。一見すると逆効果に思えますが、この高い温度の上限こそがエネルギー効率を高める仕組みになっています。

冷却の世界には「冷たいデータセンターほど効率が良い」という長年の思い込みがあったとされます。かつては室内が歩いて入れる冷凍庫のように寒くないと、どこかおかしいと考えられていました[1]。しかし実際には、シリコン製のプロセッサは想像よりずっと高い温度の環境でも問題なく動きます。45℃で入った冷却液はチップの熱を吸っておよそ55℃で出ていきますが、コールドプレート(チップに直接触れる冷却板)が部品の温度を検証済みの動作範囲に保つため、性能は落ちません[1]。

100%液冷で実現する省エネと水消費ゼロ

Rubin世代では、すべてのチップとネットワーク部品を液体で冷やし、システム内のどこにもファンがない閉ループ構成を採ります[1]。この方式は、AIファクトリー全体の設計・構築・運用の指針をまとめた「NVIDIA DSX」というリファレンスデザインに記されています。

効果は数字にも表れます。冷却はこれまでデータセンターの消費電力の最大40パーセントを占めてきたとされ、効率改善の余地が最も大きい領域の1つでした[1]。業界の試算では、冷却機の温度設定をわずか1度上げるだけで冷却にかかる電力コストを約4パーセント削減できるといいます。規模が大きくなるほど節約は積み上がり、50メガワット級の大規模施設なら、液冷インフラへ移行することで冷却関連の電力・水のコストを年間400万ドル(約6億4000万円)超も抑えられる計算です※1ドル161円換算(2026年6月22日時点)。

水の使用量はさらに劇的に変わります。気候に恵まれた地域では、45℃の液冷とドライクーラー(屋外設置の放熱器)を組み合わせることで冷却機を使わない運用が可能になり、従来の冷却塔方式で1メガワットあたり年間およそ260万ガロン必要だった水の使用をほぼゼロにまで減らせるとされます[1]。NVIDIAでデータセンター冷却・インフラを率いるAli Heydari氏は、DSXリファレンスデザインは水の消費がゼロであり、膨大な電力使用とほぼすべての水使用をなくしたと説明しています[1]。

ファンも冷気通路もない「別物」のサーバー

従来のデータセンターに足を踏み入れると、まず2つのことに気づきます。1つは騒音で、冷却ファンによって全体の音は85デシベル以上に達し、耳の保護が必要になるほどです[1]。もう1つは、冷やした空気を部品に押し当てるために綿密に管理された「ホットアイル」と「コールドアイル」(高温・低温の通路)の配置です。

Rubinアーキテクチャはこの光景を一変させます。冷却液は水75パーセントとプロピレングリコール25パーセントの混合で、プロセッサに直接乗せたコールドプレートを通って熱を発生源から引き抜きます[1]。この液体を最大45℃で流せば、多くの地域で機械式の冷却機や騒々しいファンを動かさずに施設側のループから熱を逃がせます。さらに、AIファクトリーから出る排熱を近隣の商業ビルや住宅の暖房に再利用できる可能性もあるとされています[1]。

設計を一から見直した技術的な壁

これまでの液冷サーバーは、GPUとCPUにはコールドプレートを当てつつ、残りの部品は空冷のままという折衷的なものでした[1]。完全な液冷サーバーにするには、こうした部品の冷やし方を根本から作り直す必要がありました。NVIDIAの熱設計チームは、基板上の複数の高出力チップへ1つの入口と出口で冷却液を流すループを設計し、トレイ単位でより整理された冷却構造を実現したといいます[1]。

その成果は見た目にも表れます。空冷サーバーが通気のための穴だらけの前面パネルを持つのに対し、Rubinサーバーは清潔で密閉された前面を備えます[1]。加えてラックあたりの実装密度も高まり、これまで6ラックユニットを占めていたシステムが2ラックユニットに収まるようになりました。Schneider Electric傘下の冷却部門Motivairで社長兼CEOを務めるRichard Whitmore氏は、チップあたりのワット数が一定の水準を超えた時点で液冷は必須になったと述べています[1]。一方で、こうした冷却機を使わない運用がどこまで成り立つかは地域の気候に左右される点には留意が必要で、涼しい外気が安定して得られる土地と、暑い地域とでは事情が大きく異なります。

まとめ

NVIDIAはRubin世代で、システム全体をファンなしの液体だけで冷やす100パーセント液冷を業界で初めて実現しました。冷却液を最大45℃まで上げる設計により、冷却にかかる電力を抑えつつ、好条件の地域では水の使用をほぼゼロに近づけられます。50メガワット級の施設では年間400万ドル(約6億4000万円)超のコスト削減も見込めるとされ、AIの計算需要が増え続けるなかで、その電力負荷を抑える重要な手立ての1つになりそうです。

出典:https://blogs.nvidia.com/blog/liquid-cooling-ai-factories/