Dell Technologies World の基調講演で、DellとNVIDIAが企業向けAIインフラの大幅な拡充を発表しました。新しいAIサーバー「Dell PowerEdge XE9812」はNVIDIAの新アーキテクチャ「Vera Rubin NVL72」を採用し、従来のBlackwell比でトークンあたりのコストを最大10分の1に抑えるとしています。生成AIが試験導入の段階を越え、自律的に動く「エージェント型AI」を大規模に運用する段階へ移りつつある状況を示す内容です[1]。

「使えるAI」時代に入った企業のAI需要

基調講演に立ったDell会長兼最高経営責任者のMichael Dell氏は、世界のAIインフラ投資が2030年までに3兆〜4兆ドル(約480兆〜640兆円)規模に達し、同じ期間にトークン消費量が3,400パーセント増加し得るとの見通しを示しました[1]。※1ドル=159円換算(2026年5月29日時点)

登壇したNVIDIA創業者兼最高経営責任者のJensen Huang氏は、需要が急拡大している理由を「実用に足るAIの時代に入った」ためだと説明しました。これまで数か月かかっていた作業が数週間に、数週間かかっていた作業が数日に短縮されつつあり、生産性の向上と引き換えに必要な計算量も大きく跳ね上がっていると述べています[1]。

すでにLilly、SAMSUNG、Honeywellなど5,000社が、NVIDIAと組んだ「Dell AI Factory」上でAIワークロードを本番運用しているとされ、企業のAI活用が実証実験から実装段階へ移っていることがうかがえます[1]。

Vera Rubin 搭載の新サーバー群でトークン単価を圧縮

今回の発表の中心は、アクセラレーテッドコンピューティング向けのサーバー刷新です。中核となるDell PowerEdge XE9812はVera Rubin NVL72を基盤とし、大規模なエージェント型AIの推論において、Blackwell比でトークンあたりのコストを最大10分の1に下げると説明されています[1]。

あわせて、NVIDIA HGX Rubin NVL8を採用した初のDell製システムとして「PowerEdge XE9880L」「XE9885L」「XE9882L」が登場します。1ラックあたり最大144基のGPUに対応し、計算ノードを100パーセント直接液冷する構成で、HGX B200比で最大10倍の性能を狙うとしています[1]。

ネットワーク面では、NVIDIA Quantum-X800 InfiniBandを搭載した新しい「Dell PowerSwitch」シリーズと、NVIDIA Spectrum-6 Ethernetが加わります。さらにDellは、計算・ネットワーク・ストレージを一体設計した統合システム「Dell PowerRack」も投入し、部品を個別に組み合わせる手間を省く狙いを示しました[1]。

Vera CPU とデータ基盤の刷新

CPU側では、NVIDIAの新CPU「Vera」を搭載した「Dell PowerEdge M9822」「R9822」が企業のAI基盤に加わります。VeraはデータパイプラインやアナリティクスなどエージェントAIの逐次的な処理に向けて設計され、1.2TB/sのメモリ帯域幅を備え、x86プロセッサと比べてエージェント処理を50パーセント高速に完了できるとしています[1]。

Huang氏は「Vera CPUは世界のどのCPUよりも高いシングルスレッド性能を持つ」と述べ、メモリ帯域幅が3倍であることがデータベース処理の速さにつながると説明しました。Dell AI Data Platformに加わる新しいデータエンジン「Starburst」は、Vera CPU上で大規模なSQL分析のクエリ処理を3倍高速にするとされています[1]。

オンプレミスで守るフロンティアモデルとAIエージェント

Dellが基調講演で示した自社調査では、AIワークロードの67パーセントがクラウド外(オンプレミス、デバイス上、エッジ、コロケーション)で動いており、回答者の88パーセントが少なくとも1つのAIワークロードをオンプレミスで運用していると報告されました[1]。

こうした需要に応える鍵として位置づけられたのが、機密データやモデルを保護したまま処理する「NVIDIA Confidential Computing」です。Fortanix、Google、Red Hatなどと連携し、モデルの知的財産やデータを外部に露出させずに、企業の内部でフロンティアモデルを安全に動かせるようにするとしています[1]。

具体的には、Gemini 3.0を組み込んだGoogle Distributed CloudがNVIDIA Blackwell搭載の「PowerEdge XE9780」でプレビュー提供されるほか、NVIDIA NemotronをはじめとするオープンモデルがDell AI Factory上で動作します。エージェント向けでは、OpenAIのコーディング支援「Codex」がDell AI Data Platformと連携し、社内のコードベースや業務システムと結び付けられる計画も示されました[1]。

個人の作業環境に近い領域では、NVIDIA Grace Blackwellアーキテクチャを採用した「Dell Pro Max with GB10/GB300」上で、NVIDIA Nemotronのオープンモデルを使ったデスクサイドのエージェントAIが動きます。これらを支える基盤として、エージェントを構築するためのNVIDIA Nemotronやエージェントオーケストレーション、セキュリティを担うオープンソースのランタイムが、Dell AI Factory全体にわたって提供されます[1]。

まとめ

今回の発表は、企業のAI活用が実証実験から本番運用へ移り、自律的に動くエージェント型AIをオンプレミスで安全かつ大規模に動かす段階に入ったことを示しています。Vera Rubin搭載サーバーによるトークン単価の圧縮、Vera CPUとデータ基盤の刷新、機密データを守る仕組みが一体で示された形です。Dell Technologies Worldの2日目以降には踏み込んだ解説が予定され、6月1日から4日まで開かれるGTC Taipei at COMPUTEXへと話題が引き継がれます。

出典:https://blogs.nvidia.com/blog/dell-technologies-agent-enterprise-ai