Microsoftが社内で試作していたとされる実験的なOS「Project Aion(プロジェクト・アイオン)」の動画が流出し、海外を中心に話題を集めています。WindowsとAIアシスタントのCopilotを一体化し、Startメニューやタスクバーといった30年来の常識を取り払った野心的な構想です。動画は2年ほど前のもので現在は開発が止まっている可能性が高いものの、MicrosoftがエージェントAIをどこまで推し進めようとしていたかを示す資料として注目されています。

Copilotが「Windows」そのものになる構想

現在のMicrosoftは、OSであるWindowsと、その上で動くアシスタントのCopilotを別々のものとして位置づけています。しかし流出した動画に映るProject Aionでは、Copilotが単なる付属機能ではなく、システムの中核そのものとして描かれています。Startメニューやタスクバー、これまで積み重ねてきたデスクトップの操作体系を飲み込み、AIを起点に操作する新しい画面設計が示されています。

動画はBetaWikiのDiscordサーバーを通じて最初に出回ったとされ、複数の関係者が本物だと認めていると伝えられています。ただし、社内のハッカソン的な実験だったのか、実際に製品化を狙った企画だったのかまでは分かっていません。

Webベースの新基盤「Win3」とEdgeを使ったシェル

技術面で目を引くのが、Aionが「Win3」と呼ばれる新しいWindowsのコードベース上で動いている点です。これは軽量で、全面的にWeb技術で構築された基盤とされ、画面表示の土台にはEdgeブラウザ、つまりChromiumのレンダリングエンジンが使われています。

操作の中心になるのは、マルチモーダルの入力ボックスです。文章で指示を打ち込むと、Copilotがファイルの検索やアプリの起動、Web閲覧までをこなす想定になっています。さらに「Spaces」という概念が用意され、関連するアプリやWebサイトをAIが用途ごとにまとめ、必要なときに素早く呼び出せる仕組みになっています。

Win32アプリは非対応、旧来のソフトはクラウドで

Web技術に寄せた設計のため、AionではWordのような従来型のWin32アプリをそのまま動かすことはできません。こうしたソフトが必要な場合は、クラウド上の仮想PCサービス「Windows 365」へのリンクを介して、リモートで安全に実行する仕組みが取られています。ローカルで完結しないこの方式は、使い勝手と引き換えにクラウド依存を強める設計といえます。

Copilotと連携する「リッチプラグイン」も用意され、たとえば入力ボックスから同僚宛てのOutlookメールを作成・送信するといった操作が想定されています。開いているSpaceの内容をもとに、AIが文面まで下書きするイメージです。

一方で、流出動画への反応は必ずしも好意的ではありません。ローカルアプリのサポートが弱まることへの懸念や、常時AIが介在することへのプライバシー面の不安が多く挙がっています。Microsoftは当初、Windows 11のあらゆる場所にCopilotを組み込もうとしていましたが、最近はその勢いをやや抑える姿勢も見せています。それでもCopilotはエージェント的な役割を増やし続けており、Edgeブラウザ単体でもAionが目指した操作の一部はすでに実現しつつあります。

まとめ

Project Aionは、CopilotをOSの中心に据えるという、Microsoftのかなり踏み込んだAI構想を垣間見せる資料です。2年前の実験で、おそらく現行製品に直結するものではありませんが、「AIエージェントを軸にデスクトップを一から作り直すとどうなるか」という問いへの一つの答えになっています。賛否が分かれる内容ではありますが、今後のWindowsやCopilotの進化を占ううえで示唆に富む一件です。