Metaは2026年7月9日(米国時間)、エージェント型のコーディングに特化した新しいAIモデル「Muse Spark 1.1」を正式に公開しました。開発者向けの「Meta Model API」を通じて有料で提供し、Meta自社モデルの利用を課金対象とするのは今回が初めてです。先行するOpenAIやAnthropicを、低価格を武器に追いかける構えです。
エージェント処理に特化したマルチモーダルモデル
Muse Spark 1.1は、Metaの研究組織Meta Superintelligence Labsが手がけるマルチモーダル(文章や画像など複数種類のデータを扱える)モデルで、最初の発表は4月に行われていました。今回、開発者が実際に使える形での提供が始まった格好です。
Metaは、複数の手順を要する推論や、外部アプリ・サービスをまたいだ計画と調整(オーケストレーション)を伴う「個人向けのエージェント作業」で高い性能を発揮すると説明しています。想定用途として挙げるのは、大規模なエージェント処理、バグ修正、そして大がかりなコード移行といった、実務寄りの作業です。
技術的な特徴としては、最大100万トークンの文脈(コンテキスト)を自分で管理する仕組みや、複数のAIが連携する構成のなかで「主エージェント」としても「サブエージェント」としても動ける点を挙げています。さらに、外部ツールと連携するためのMCP(Model Context Protocol)サーバーや独自スキルにネイティブ対応し、コンピュータを直接操作する機能も備えるとしています。
競合を意識した「低価格」戦略
Metaがくり返し強調するのが料金の安さです。Meta Model APIでMuse Spark 1.1を利用する場合、料金は入力100万トークンあたり1.25ドル(約200円)、出力100万トークンあたり4.25ドル(約690円)です。これはAnthropicの「Claude Haiku 4.5」やOpenAIの「GPT-5.6 Luna」をわずかに上回る程度の水準にとどまります。
Meta Model APIは同日、米国の開発者向けに公開プレビューとして提供が始まりました。使った分だけ支払う従量課金制で、新規アカウントには20ドル(約3,200円)分の無料クレジットが付くとされています。※1米ドル=162円換算(2026年7月10日終値ベース)
Metaはこれまで、AIモデルを無償で配布する路線を前面に出してきました。自社モデルの利用に課金する仕組みを導入したことは、OpenAIやAnthropicが先行する有料AIモデル市場に、Metaが本格参入する意思表示と受け止められています。
ザッカーバーグ氏が3年ぶりのXで自らアピール
今回の公開に合わせて、Metaのマーク・ザッカーバーグCEO自らがX(旧Twitter)に投稿しました。ザッカーバーグ氏がXを使うのは、同サービスがTwitterから改称した2023年7月以来、約3年ぶりです。投稿ではMuse Spark 1.1を「非常に低価格で提供する、強力なエージェント/コーディング向けモデル」と表現し、エージェント作業やツール操作での性能を押し出しました。
さらにザッカーバーグ氏は「近いうちにさらに続く」とも述べ、追加モデルの投入を予告しています。実際、Metaは同じ週に画像生成モデル「Muse Image」も公開しており、モデルを矢継ぎ早に送り出す姿勢が鮮明です。同時期にはOpenAIの「GPT-5.6」など各社の新モデル発表も相次いでおり、開発者向けAIをめぐる競争は一段と激しくなっています。
まとめ
Meta Muse Spark 1.1は、エージェント処理とコーディングに軸足を置き、低価格と有料API提供という新しい一手でOpenAIやAnthropicを追う戦略モデルです。100万トークンの自己管理コンテキストやMCP対応など、実務でエージェントを組む開発者に響く仕様がそろっています。無償配布から課金へと路線を切り替えたMetaが、価格競争力を武器に開発者をどこまで取り込めるかが、これからの見どころになりそうです。
