xAIは、画像から短い動画を作る生成AI「Grok Imagine Video 1.5」を正式提供に切り替えました。開発者向けの「Imagine API」に加えて、ウェブ版のgrok.com/imagineと、GrokのiOS・Android向けアプリでも使えます。最大の変化は生成速度と音声で、高速版は6秒の720p動画を約25秒で書き出し、効果音やせりふといった音まで映像と同じ工程で同時に作ります。イーロン・マスク氏も6月17日に広く開放したことを表明しました。

「画像→動画」を高速化、音声も同じ工程で生成

Grok Imagineは、1枚の静止画と動きを説明する指示文を渡すと、短い動画クリップに仕立てるツールです。今回の1.5では、その生成速度が大きく上がりました。高速モードの「Video 1.5 Fast」は、6秒の720p動画をおよそ25秒で出力します。前のモデルでは40秒以上かかっていたため、待ち時間はほぼ半分です。

速度と並ぶもう一つの目玉が音声です。これまで多くの動画生成AIは、まず無音の映像を作り、効果音やナレーションは別の工程であとから合わせる必要がありました。Grok Imagine Video 1.5は、映像の動きと音を同じ生成のなかでまとめて作ります。指示文のなかで背景の雰囲気や周囲の音、人物の動きまで指定できるため、音を後付けする手間を減らせるのが利点です。

生成が速くなることは、作る人の試行錯誤のしかたも変えます。1本あたりの待ち時間が短ければ、出来の悪いものを早めに捨てて次を試せます。長いレンダリングを待ってから、動きや間、音のずれに気づくという従来の流れから抜け出しやすくなります。

物理表現の改善と、720pという上限

xAIは映像の自然さも詰めたとしています。物体や人物の重さ・勢いといった動きの表現を見直し、手や物、キャラクターの動きが不自然にゆがむ現象を抑えたと説明します。こうした破綻は、見る人に「AIで作った映像だ」と一目で気づかせてしまう弱点でした。

一方で、はっきりした上限も残ります。Grok Imagine Video 1.5の出力は720pまでで、1080pには対応していません。すでに1080pを出せる競合ツールがあるなかで、速度と価格だけでは埋めきれない差です。SNS向けの短い動画や企画段階の試作では720pでも十分こなせますが、品質を求めるクライアント案件では、解像度が引き続き採用のハードルになりそうです。

価格は比較的安く設定されており、報じられているところでは映像1分あたり4.20ドル(約680円)程度とされています。低コストでの利用は、GoogleのVeoやRunwayといった高機能なツールに対して、出力品質が一定の水準を保てるなら、xAIにとって有利な比較材料になります。

※1ドル=162円換算(2026年6月時点)

制作ワークフロー向けの新ツール

xAIは、映像を作る機能そのものに加えて、作業を整理するための道具立ても順次追加します。関連する生成物をまとめる「Projects」、複数の指示を同時並行で走らせる仕組み、過去に作った画像や動画を探し出す「ライブラリー検索」などです。

これらは、1本ずつ順番に生成を待つのではなく、複数の方向性を並行して試し、生成済みの素材を保存先からすぐ見つけられるようにするものです。広告やキャンペーンの短尺動画のように、多くの案を素早く比べながら絞り込む作業では、こうした下支えが効いてきます。

ライバルがひしめく動画生成AIの現在地

人の好みを比較で測る独立系のランキング「Image-to-Video Arena」では、Grok Imagine Video 1.5は上位につけており、Eloスコアはおよそ1,330とされています。同じ画像→動画の土俵には、ByteDanceの「Seedance 2.0」、Kuaishouの「Kling 2.6」、MiniMaxの「Hailuo」などが出荷済みのライバルとして並びます。

Grok Imagineは2025年から続く製品系列で、過去には実在の人物をもとにした不適切な映像の生成をめぐって問題も指摘されました。今回の1.5は、その系列に速度・音声・制作支援を上乗せした更新という位置づけです。残る最大の宿題は1080p対応で、これが整わないかぎり、品質重視の業務用途では制約が続きます。

まとめ

Grok Imagine Video 1.5は、画像から動画を作る生成AIに「速さ」と「音声の同時生成」を持ち込み、6秒の720p動画を約25秒で書き出せるようになりました。物理表現の改善や、複数案を並行で試せる制作ツールもそろい、低価格を武器に競合へ挑みます。とはいえ出力は720pまでで、1080pを出せるライバルに対しては品質面の制約が残ります。速度と価格の手軽さが、本格的な制作の現場でどこまで通用するかが、次に問われることになりそうです。