Googleが9月9日、フィンランドのデジタルインフラに2027年から2028年までの2年間で130億ユーロ(約2兆3,000億円)を投じると発表しました。同社が欧州で実施する単独の投資としては過去最大です。特徴的なのは、サーバーの増設と同時に、原子力発電所の運転延長を支える22年契約まで押さえにいった点にあります。

15年目のハミナから、内陸へ広がる

Googleがフィンランドに拠点を構えたのは15年前、南部ハミナの旧製紙工場をデータセンターに転用したのが始まりでした。海水を使った冷却や、排熱を近隣の住宅や事業所へ回す仕組みなど、環境面の実験場としても使われてきた場所です。2023年から2025年の3年間だけでも、建設・運用・光ファイバー網にまたがる600社を超えるフィンランド企業が周辺に集まっています。

今回の投資は、そのハミナをさらに拡張したうえで、カヤーニ、ムホス、ヴァーラの3か所に新しい施設を建てる計画です。いずれも内陸側の地域で、検索やマップ、Geminiといった同社の中核サービスの需要増に対応する狙いが説明されています。冷涼な気候と低炭素電源の多さは、以前からフィンランドがデータセンター立地として選ばれてきた理由でもあります。

※1ユーロ=179円換算(2026年9月10日時点)

電力を22年分、先に確保する

エネルギー面で目を引くのが、フィンランドの電力会社Fortumとの契約です。ロヴィーサ原子力発電所の運転延長を支える22年間の電力購入契約を結び、Fortumの説明では2028年に少量の受電から始め、2030年から2049年にかけて同発電所の発電量の最大50パーセントを引き取る形になります。

ロヴィーサは2基の原子炉を持ち、フィンランドの電力供給のおよそ1割を担ってきた設備です。運転期間を2050年まで延ばすには10億ユーロ(約1,800億円)規模の改修が必要とされており、長期の買い手が付いたことでFortumはその投資判断を下しやすくなります。老朽化した既存炉をどう延命するかという電力会社側の課題と、大量の電力を安定して確保したいIT企業側の事情が、ここでかみ合った格好です。

契約は原子力だけではありません。Googleは陸上風力の新設と、94メガワット規模の蓄電池システムの契約も併せて進めるとしています。蓄電池の役割として挙げられているのは、風が止み気温が下がる時期に価格が跳ね上がるのを抑えることで、単なる自社用の電源確保ではなく系統全体の安定を意識した組み立てになっています。

3万7,000人の雇用と、55億円の地域配分

経済効果としてGoogleが挙げているのは、2027年から2028年の建設段階で全国3万7,000人以上の雇用を支え、年間36億ユーロ(約6,400億円)をフィンランドのGDPに寄与するという数字です。稼働後も、エンジニアから警備、給食まで幅広い職種で恒久的な雇用が生まれるとしています。

地域への直接の配分も示されました。ハミナ、カヤーニ、ムホス、ヴァーラの4自治体に対し、今後4年間で3,100万ユーロ(約55億円)を教育と経済振興に充てる内容です。地元の高等教育機関と組んで4,400人以上の労働者にAI関連の再教育プログラムを提供するほか、100人の学生にデータセンターで働くための訓練機会を用意します。近隣の森林や湿地の再生、遊歩道やサウナ、釣り桟橋の整備といった項目も並んでおり、施設が地域に与える負荷を意識した内容が目立ちます。

勝負どころが電力に移ってきた

一連の発表から読み取れるのは、AIインフラの競争軸がチップの調達から電力の調達へと広がってきたことです。演算能力をいくら積み上げても、それを24時間動かし続ける電気が確保できなければ意味がありません。しかも今回の契約は2049年までという長さで、既存の原子炉が新しい価値を帯び始めていることも示しています。

一方で、数十年単位の電力を1社が押さえることが地域の電気料金や系統の使い方にどう跳ね返るかは、まだ答えの出ていない論点です。Googleは価格の安定に配慮すると説明していますが、実際の影響が見えてくるのは受電量が本格的に増える2030年以降になります。フィンランドという1国の電力供給に、1社の投資判断がここまで深く関わる構図そのものが、これまでのデータセンター投資とは質の違うものになっています。

まとめ

Googleがフィンランドに投じる130億ユーロは、ハミナの拡張と内陸3か所の新設という施設面だけでなく、ロヴィーサ原発の運転延長を支える22年契約、陸上風力、94メガワットの蓄電池までを含む一体の計画です。建設段階で3万7,000人超の雇用と年間36億ユーロのGDP寄与、4自治体への3,100万ユーロの配分といった数字も示されました。チップの次に問われるのは電力であることを、これ以上ないほど分かりやすく示した発表と言えます。