ロボット向けの基盤モデルを開発するGeneralistが、8VCの主導でおよそ2億ドル(約320億円)を追加で調達し、評価額が30億ドル(約4,800億円)に達したと関係者の話として伝えられています。6月に公表した4億ドルのシリーズBの延長にあたり、この一連のラウンドの総額は6億ドルに膨らみました。設立から2年、表に出ることの少なかった会社が、急に相場の中心へ引き出された格好です。
※1ドル159円換算
2か月で評価額が1.5倍になった
今回の調達は、規制当局への届け出をもとに約2億ドル規模と見られています。6月に発表されたシリーズBはRadical Venturesが主導し、そのときの評価額は20億ドル(約3,200億円)でした。それから2か月ほどで20億ドルが30億ドルへ、ラウンド全体では4億ドル(約640億円)が6億ドル(約950億円)へと積み上がったことになります。Generalistと8VCはコメントを出していません。
会社の成り立ちを見ると、資金が集まる理由は分かりやすいところがあります。Generalistは2024年、Google DeepMindの研究者だったPete Florence氏とAndy Zeng氏、Boston DynamicsのエンジニアだったAndrew Barry氏によって設立されました。初期の出資者には8VCとRadical Venturesのほか、NVIDIA、Union Square Ventures、Bezos Expeditions、そして研究者のFei-Fei Li氏が並びます。ロボット学習と生成モデルの両方で名前の通った顔ぶれが、設立直後から後ろに付いていたわけです。
3秒から12秒の手本で新しい作業を覚える
Generalistが作っているのは、特定の機種に縛られない汎用のロボット基盤モデルです。8月に公開した最新版のGEN-1.5では、新しい作業を3秒から12秒ほどの手本の映像を1本見せるだけで実行できると説明されています。追加学習も勾配の更新も行わず、その場で文脈として受け取った映像から動作を組み立てる、という考え方です。
同社が示した評価では、10種類の作業に対する1回きりの手本での成功率は平均59パーセントでした。ここに5分ぶんのデータで10ステップだけ勾配更新を加えると、83パーセントまで上がります。手本を渡した直後の実力と、少しだけ追加学習した後の実力の差が、この数字に表れています。
面白いのは、手本どおりに真似るだけでは終わらない挙動が出ている点です。訓練で使ったブラシの代わりにちりとりを渡されると、ブロックを持ち上げて器へ落とし込む。バナナをブラシ代わりに使う。片手の手本しか見ていないのに両手で作業する。シミュレーション内だけで撮った手本が、実機への指示としてそのまま通る場面も報告されています。30秒ぶんの文脈に2つの手本を入れておくと、その2つをつなぐ動きを自前で補って、より長い一連の作業として実行するといいます。
現時点では少数の顧客と組み、そのフィードバックを使って用途ごとにモデルを詰めている段階だとされています。
「ロボットのChatGPTの瞬間」に賭ける資金
ロボットの頭脳を汎用モデルとして作る動きは、Generalistだけのものではありません。Physical Intelligenceは評価額110億ドル(約1兆7,500億円)と報じられ、ソフトバンクが出資するSkild AIは140億ドル(約2兆2,300億円)とされます。Genesis AIも先月時点で30億ドルの評価額での調達を協議していました。30億ドルという数字は、この顔ぶれの中ではむしろ入口に近い位置です。
資金が集中している背景には、ロボットにも大規模言語モデルと同じ転換点が来るという読みがあります。作業ごとに個別の訓練を積まなくても、一般的な仕事をこなせるようになる瞬間です。
ただし、そこには冷ややかな見方も付いてまわります。言語モデルはインターネット上の文章をほぼ丸ごと学習に使えましたが、ロボットの動作データにそれに相当する蓄積はありません。手本の映像1本で新しい作業に移れるという性質は、まさにその不足を補うための工夫とも読めます。本当の意味で汎用のロボットモデルが出てくるのはまだ何年も先だ、と警戒する投資家の声も残っています。
まとめ
Generalistの評価額は、2か月で20億ドルから30億ドルへ切り上がりました。GEN-1.5が示した「短い手本1本で新しい作業へ移る」という振る舞いは、ロボットが抱えてきたデータ不足への回答として説得力があります。一方で、成功率の平均は59パーセントで、追加学習を挟んでも83パーセントです。実験室での器用さが現場の歩留まりに変わるまでには、まだ距離があります。評価額の伸び方と実力の伸び方が同じ速度なのかは、次の1年で見えてくるはずです。
