Discord は、2026 年 3 月以降の全ボイス・ビデオ通話を独自の E2EE プロトコル「DAVE(Discord Audio and Video End-to-End Encryption)」で保護していることを、改めて公式ブログでアピールしました[1]。同社は 2025 年 9 月の発表で「2026 年 3 月 1 日以降、DAVE 非対応のクライアントは Discord の通話に参加できなくなる」と告知しており[2]、3 月 2 日の強制移行を経て、ダイレクトメッセージ・グループメッセージ・ボイスチャンネル・Go Live 配信のすべてが既定で E2EE 化された状態が続いています[3][4]。
DAVE で「すべての通話」を既定 E2EE に
Discord が DAVE を本格運用に切り替えたのは 2025 年 9 月のロードマップ発表が起点でした。当時公開された Engineering & Developers 向けブログでは、ブラウザ・コンソール・Social SDK を含む全プラットフォームへの DAVE 展開と、2026 年 3 月 1 日を期限とする旧クライアントの切断方針が示されています[2]。Discord 側は「DAVE はすでに毎日数千万件の通話を E2EE で保護している」と説明しており[2]、3 月以降は段階導入ではなく既定の通信路として全ユーザーへ広がった形です。
サポートドキュメントでも、ダイレクトメッセージ・グループメッセージ・ボイスチャンネル・Go Live 配信における音声と映像が、2026 年 3 月 2 日から E2EE 必須になったと明記されています[3]。テキストチャットは従来どおりサーバー側の暗号化のみで、コンテンツモデレーションポリシーの対象として残されました[3][4]。
VP of Core Tech が振り返った「数年かけた経路」
3 月 3 日に米テック媒体 PiunikaWeb が公開した解説記事によれば、Discord の VP of Core Tech である Mark Smith 氏は X(旧 Twitter)で「エッジケースを解決し、旧クライアントの廃止期間を待つのに数年かかったが、ようやくここまで来た」「チームを本当に誇りに思う」と投稿し、強制移行の完了を表明しています[4]。
DAVE の仕組みも改めて整理されました。各フレームは送信者ごとの対称鍵で個別に暗号化され、通話参加者だけが復号できる設計です[4]。Discord 自身も鍵を保持しないとされ、同社は「メディア暗号化鍵は外部に渡らない」とブログで説明しています[2]。ユーザー側は通話画面の鍵アイコンと「Voice Privacy Code」を相手と照合することで、E2EE の有効化と参加者の同一性を確認できる仕組みです[3][4]。
なお、Stage チャンネルは多人数配信を前提とした別アーキテクチャを採っているため、クライアントとサーバー間の通信路は暗号化されるものの、E2EE の対象には含まれていません[2][3]。
ブラウザ・コンソール対応と旧クライアントの切断ライン
DAVE をブラウザに持ち込むために、Discord は WebRTC の Encoded Transform API と Web Worker を組み合わせ、暗号処理を WebAssembly で実装する構成を採用しました[2]。同社のベンチマークでは、音声フレームは SubtleCrypto と比べて約 28 パーセント高速になる一方、サイズの大きい映像フレームでは約 192 パーセント遅くなるという結果が示されており、低遅延の音声を優先したトレードオフであることが説明されています[2]。
Firefox 上の実装では、WebRTC スクリプトトランスフォームを早期に呼び出すとデッドロックする不具合が見つかり、Discord 側が Firefox 本体にパッチを送って Firefox 142.0 へ取り込まれました[2]。コンソール側では Xbox One・Xbox Series S|X が段階的に DAVE 対応へ切り替わり、PlayStation も次回システムアップデート後に有効化される計画です[2]。Discord Social SDK は最初から DAVE 対応が組み込まれているため、これを利用するサードパーティアプリは個別対応なしで E2EE 通話に追従できます[2]。
セキュリティレビューについては、2024 年の設計・実装レビューに続き、2025 年 6 月に Trail of Bits によるブラウザ実装の追加監査が実施され、結果が公開されています[2]。バグ報奨金プログラムも DAVE プロトコル関連の脆弱性報告を対象に含めたままです[2]。一方で、長期間アップデートしていない古いクライアントや非対応のサードパーティ実装は 3 月以降の通話に参加できなくなっており、長らく更新を止めていたユーザーはまずアプリの最新化が必要になる状況です[2][4]。
まとめ
Discord は 2026 年 3 月 2 日からのボイス・ビデオ通話 E2EE 強制を経て、DAVE プロトコルを既定の通信路に据えました。Discord 自身が鍵を保持しない構造、Trail of Bits による継続的な監査、ブラウザ・コンソールを含む横断的な展開という三点で、テキスト以外の通話領域に絞った着実な E2EE 体制が整った形です。
出典 [1]: https://discord.com/blog/every-voice-and-video-call-on-discord-is-now-end-to-end-encrypted
出典 [2]: https://discord.com/blog/bringing-dave-to-all-discord-platforms
出典 [4]: https://piunikaweb.com/2026/03/03/discord-enforcing-end-to-end-encryption-voice-video-calls/
