OpenAIは、ChatGPTのメモリ機能を強化したと発表しました。会話の文脈やユーザーの好みを覚えておく記憶技術「Dreaming」を「V3」へ更新し、過去のやり取りをこれまでより正確に引き継ぎながら、時間の経過に合わせて記憶を自動で書き換えられるようにしています。提供はまず米国のPlus・Proユーザー向けに始まり、今後数週間かけて他の国やFree・Goユーザーへも順次広げる予定です。
メモリ機能が満たすべき「3つの条件」
ChatGPTのメモリ機能は、ユーザーの好みや進行中のプロジェクト、守ってほしい制約などを覚えておき、新しい会話のたびにゼロから説明し直さずに済むようにする仕組みです。OpenAIは、役に立つメモリが満たすべき条件として3点を挙げています。過去の会話で伝えた事実を正しく思い出せること、好みや制約に沿った回答を返せること、そして時間がたっても記憶が古びないことです。
たとえば、ベジタリアンだと伝えてあれば、食事の提案は自然とそれに沿った内容になります。「7月にシンガポールへ行く」と話していた予定は、旅行が終わると「2026年7月にシンガポールへ行った」と過去形へ自動で書き換わります。ただ覚えるだけでなく、状況の変化に合わせて記憶そのものを更新できる点が、今回の強化の核心です。
「Dreaming V3」で記憶の引き継ぎが正確に
今回アップデートされた「Dreaming」は、ChatGPTが会話から要点を整理し、記憶へ落とし込むための内部技術です。V3では、過去の文脈や好みをこれまでより高い精度で引き継ぎ、不要になった情報は時間とともに更新・整理されるようになりました。
従来のメモリは「いつ伝えた情報なのか」が曖昧になりがちで、すでに終わった予定や古い好みがそのまま残ってしまうことがありました。V3はこの弱点に向き合い、記憶を最新の状態に保つことを重視した設計になっています。
社内評価で示された精度の向上
OpenAIの社内評価によると、Dreaming V3は前述の3条件すべてで数値を大きく伸ばしました。過去の会話で伝えた事実を正しく思い出せる割合は、2024年時点の41.5パーセントから82.8パーセントへ高まったとしています。好みや制約に沿った回答を返せる割合は31.4パーセントから71.3パーセントへ、時間の経過に合わせて記憶を更新できる割合は9.4パーセントから75.1パーセントへと改善しました。
なかでも「記憶を更新できるか」を測る指標は、9.4パーセントから75.1パーセントへとおよそ8倍に跳ね上がっています。古い情報を抱え込まずに最新へ整える力が、大きく前進したことがうかがえます。
記憶の中身を確認できる「メモリサマリーページ」
あわせて、ChatGPTが自分について何を覚えているのかを一覧できる「メモリサマリーページ」が新設されました。画面上で記憶の要点を確認できるほか、情報の追加や修正、取り上げてほしい話題やタイミングの指定もできます。項目ごとに「修正する」「今後は話題にしない」といった指示を出せるため、利用者が自分の手でメモリを管理しやすくなっています。
何を覚えられているのか分からないという不安は、メモリ機能に対する代表的な懸念でした。記憶の中身を見える化し、ユーザー自身で整理できるようにした点は、安心して使ううえでの後押しになりそうです。
計算コストを抑え、無料ユーザーへ
Dreaming V3では、処理に必要な計算量を従来比でおよそ5分の1まで削減できたとしています。この効率化によって、これまで負荷の都合で広げにくかった無料ユーザーへの展開や、Plus・Proユーザーのメモリ容量の拡大が可能になりました。
提供はまず米国のPlus・Proユーザーから始まり、今後数週間で対象の国を広げつつ、Free・Goユーザーへも順次拡大する計画です。高度な機能を上位プランだけに閉じ込めるのではなく、土台を効率化したうえで幅広い利用者へ届ける流れになっています。
まとめ
今回のアップデートは、ChatGPTのメモリを「覚える」だけの機能から「時間に合わせて整える」機能へと進める内容です。記憶技術DreamingをV3へ刷新して引き継ぎの正確さを高め、社内評価では3つの指標がそろって向上しました。さらにメモリサマリーページで記憶を可視化し、計算コストの削減によって無料ユーザーまで対象を広げます。AIが個人の文脈を長く覚えていく流れが進むなかで、精度と透明性、そして提供範囲の広さを同時に押し上げてきた発表だと言えそうです。
