ByteDanceが6月23日、北京で開いた自社イベント「Volcano Engine FORCE」で、新しい動画生成AI「Seedance 2.5」を発表しました。短いクリップをつなぎ合わせず、30秒の映像を1回の生成でひとまとめに作れると謳うのが最大の特徴です。最大50点の参照素材の取り込みや、画面の一部だけを描き直す部分編集にも対応します。現在は法人向けの先行ベータで、一般公開は7月初旬の予定です。
「継ぎ目なしの30秒」が映像制作で効く理由
これまでの主要な動画生成AIは、1回の生成で作れる長さがおおむね8〜15秒に限られていました。Googleの「Veo 3.1」やRunwayの「Gen-4.5」、すでに提供を終えたOpenAIの「Sora 2」もこの範囲にとどまり、より長い映像を作るには短いクリップを順番につなぐ必要がありました。ただ、つなぎ目では登場人物の顔つきが微妙に変わったり、照明や色味がそろわなかったりと、いかにもAIで作ったとわかる不自然さが出やすいのが弱点でした。
テレビCMやSNS向け広告、解説動画、短いドキュメンタリーの多くは15〜60秒の尺に収まります。Seedance 2.5は、この帯域をつなぎ目のない1本で生成できると説明しています。ByteDanceは、映像と音声を別々に作って後から合わせるのではなく、同じ内部空間でまとめて処理する仕組みと、時間方向の一貫性を保つ独自の注意機構によって、30秒のあいだ人物や照明、動きの作風を保てるとしています。
最大50点の参照素材と、部分だけの描き直し
Seedance 2.5には3つの生成モードがあります。文章から映像を起こす「テキスト→動画」、静止画を動かす「画像→動画」、そして既存の映像を手本にカメラワークや動きの作風を引き継ぐ「動き参照」です。
なかでも注目度が高いのが参照素材の扱いです。Seedance 2.5は画像・動画・音声を合わせて最大50点まで同時に取り込めます。前世代のSeedance 2.0がおよそ12点だったのに対して大幅に増え、参照の細かさで近いとされるGoogleのVeo 3.1が3点までであることを踏まえると、その差は小さくありません。Volcano Engineの譚待(Tan Dai)社長は、登場人物の顔や商品の見た目、作風、音楽の雰囲気を1本の映像のあいだ崩さずに保つ、ブランド表現や連続もの制作を想定した機能だと説明しています。
さらに、画面内の特定の要素だけを描き直す部分編集にも対応します。登場人物の服や背景、画面内の商品などを、映像全体を作り直さずに差し替えられる仕組みです。これまでは小さな修正のために最初から作り直し、ほかの部分が無事であることを祈る必要がありました。その手戻りを減らせる点は、実務でじわりと効いてきます。
Seedance 2.0は4Kへ、独立系の評価でも首位
同じイベントでByteDanceは、現行のSeedance 2.0を10ビット色深度のネイティブ4K出力に対応させたことも明らかにしました。すでに2.0を組み込んでいる開発チームにとっての底上げになります。
実力の裏づけとして、人間の好みを比較で測る独立系のランキング「Artificial Analysis Video Arena」では、音声付きのテキスト→動画部門でSeedance 2.0がEloスコア1,218で首位に立ち、Kling 3.0やVeo 3.1を上回っています。これは現在出荷中の2.0の評価で、2.5のスコアはまだありません。ByteDanceは、法人向けのSeedance事業が年間経常収益(ARR)で20億ドル(約3,200億円)に達したとも述べており、2.5の投入前から相応の商用実績を積んでいることがうかがえます。配信は同社のクラウド「Volcano Engine」を軸に、月間利用者が4億人を超える動画編集アプリ「CapCut」や、「Dreamina」「Doubao」といった消費者向けの窓口を通じても広がる見込みです。
※1ドル=162円換算(2026年6月25日時点)
残る宿題は第三者検証と著作権
ここで挙げた性能は、いずれも6月23日の発表時点でのByteDanceの主張にとどまります。30秒の一括生成も、50点の参照の扱いも、部分編集の安定性も、第三者による検証はまだありません。一般公開が見込まれる7月初旬以降に、外部の手で初めて確かめられることになります。料金も現時点では公表されていません。
著作権をめぐる経緯も見過ごせません。Seedance 2.0は2026年2月の提供開始後、Motion Picture Association(全米映画協会)から、大手の生成AI企業として初となる警告書を受け取りました。DisneyやWarner Bros. Discovery、Paramount、Netflix、Sony Pictures、Universalも相次いで警告を出し、ByteDanceは3月にグローバル展開をいったん見合わせています。同社はその後、実在の人物の顔や著作権で保護されたキャラクターの生成を遮断するフィルターを追加しており、この対策は2.5にも引き継がれる見通しです。FORCEでは、映画監督のスティーヴン・チャウ(周星馳)を最初のパートナーに据えた、著作権の許諾と収益化のためのプラットフォームも予告されました。なお、ByteDanceは中国・北京に本社を置く企業のため、業務で機密性の高い素材を扱う場合は、データの取り扱いに関する各国・地域の規定とあわせて確認しておくのが無難でしょう。
まとめ
Seedance 2.5は、短いクリップを継ぎ合わせずに30秒の映像を一括生成できると謳い、最大50点の参照素材や部分編集といった実務寄りの機能を備えて登場しました。土台となるSeedance 2.0が独立系の評価で首位を占めることもあり、仕様が約束どおりなら、長尺の動画生成という難所で一歩抜け出す可能性があります。とはいえ現段階はあくまで企業側の発表であり、第三者検証はこれから、著作権の整理も道半ばです。7月の一般公開で実力がどう確かめられるかが、最初の見どころになりそうです。
