AI開発を手がけるAnthropicは、シリーズHラウンドで650億ドル(約10兆3,000億円)を調達したと発表しました。調達後の企業評価額は9,650億ドル(約153兆円)に達し、AI企業として世界最大級の規模になります。今回の資金は、安全性と解釈可能性の研究、Claudeの需要拡大に対応するための計算資源の確保、そして顧客が利用する製品やパートナーシップの強化に充てられる方針です[1]。※1ドル=159円換算(2026年5月31日時点)
650億ドル調達、評価額は9,650億ドルに
今回のシリーズHは、Altimeter Capital、Dragoneer、Greenoaks、Sequoia Capitalがリード投資家を務めました。さらにCapital Group、Coatue、D1 Capital Partners、GIC、ICONIQ、XNが共同リードとして加わっています[1]。
そのほかの主要な出資者として、Blackstone、Brookfield、Fidelity Management & Research Company、General Catalyst、Insight Partners、Jane Street、Lightspeed Venture Partners、MGX、T. Rowe Price、Temasek、Baillie Gifford、DST Global、D.E. Shaw Ventures、Situational Awareness LPなどが名を連ねます。日本からはNTTグループのコーポレートベンチャーキャピタルであるNTTVCも参加しました[1]。
今回のラウンドには、ハイパースケーラーからすでに表明されていた150億ドル(約2兆4,000億円)の投資も含まれており、このうち50億ドル(約8,000億円)はAmazonによるものです[1]。
売上は年換算で470億ドルを突破
Anthropicによると、2月のシリーズG以降も世界の大企業を中心に採用が拡大し、年換算の売上高(run-rate revenue)は5月初旬に470億ドル(約7兆5,000億円)を超えました。さまざまな業種の企業がClaudeを基幹業務に組み込み、日常業務で利用する人も世界的に増えているとしています[1]。
同社の最高財務責任者を務めるKrishna Rao氏は、調達にあたり「Claudeは拡大を続ける世界の顧客にとって、ますます欠かせない存在になっている」と述べ、Claude CodeやCoworkといったツールをより便利で強力なものにしていく姿勢を示しました。今回の資金は、急増する需要に応え、研究の最前線にとどまり、Claudeを実際に仕事が行われる現場へ届けるために役立つとしています[1]。
なお今回の調達は、同社がコーディングやエージェント的な作業の性能を高めた新モデル「Claude Opus 4.8」を公開した直後に行われました[2]。
計算資源の確保へ、メモリ大手や3大クラウドと連携
Anthropicは、Claudeの需要拡大を支えるために計算能力を直近数週間で大きく増強したと説明しています。Amazonとは最大5ギガワットの新規容量、GoogleおよびBroadcomとは次世代TPUの5ギガワット分、SpaceXとはデータセンター「Colossus 1」「Colossus 2」におけるGPU容量の利用について、それぞれ契約を結びました[1]。
クラウド面では、ClaudeはAmazon Web Services、Google Cloud、Microsoft Azureという世界最大規模の3つのクラウド基盤すべてで利用できる初のフロンティアモデルになったとしています。中でもAWSは引き続き主要なクラウドプロバイダーかつ学習パートナーと位置づけられています[1]。
半導体の供給網を担う戦略的パートナーとして、メモリやストレージ、ロジックチップで重要な役割を持つMicron、SAMSUNG、SK hynixも今回のラウンドに加わりました。Claudeの需要が伸び続けるなかで、こうした関係が計算資源を安定して拡大する助けになるとしています[1]。
投資家が示した期待
リード投資家のAltimeter Capitalで創業者兼最高経営責任者を務めるBrad Gerstner氏は「Claudeの最新の進化が、世界で最も要求の厳しい組織への大規模な採用を後押ししている」と評価し、Anthropicが次のAIイノベーションを主導する位置にあるとの見方を示しました[1]。
DragoneerのマネージングパートナーであるMarc Stad氏は「足元の技術的な進歩は息をのむほどだ」と述べたうえで、AIの開発と商用化はまだごく初期の段階にあるとの認識を示しました。Sequoia CapitalのパートナーであるAlfred Lin氏も、スタートアップから大企業までがClaudeで複雑な業務を処理しており、その過程でClaudeが企業の実際の業務のあり方を学んでいると指摘しています[1]。
まとめ
AnthropicはシリーズHで650億ドルを調達し、評価額は9,650億ドルに達しました。年換算売上が470億ドルを超えるなど事業が急拡大するなか、調達資金は安全性研究と計算資源の確保、製品・パートナーシップの強化に向けられます。Amazonやメモリ大手、3大クラウドとの連携を含め、AI開発を支えるインフラ確保の動きが一段と鮮明になった発表と言えるでしょう。
