アドビが「2026年版 クリエイターツールキットレポート」の日本の調査結果を公開しました[1]。日本のSNSクリエイターのうちクリエイティブAIを使っているのは64パーセントで、グローバルの71パーセントより低い水準です。一方で、AIを使う人の81パーセントがビジネスやフォロワーの伸びが加速したと答えており、道具としては定着し始めています。同時に86パーセントが「最終的なクリエイティブ上の判断は常に自分に残るべき」と答えており、任せる範囲を明確に線引きする姿勢が浮かびました。
日本の活用率はグローバルより低い
この調査は、アドビが調査会社Harris Pollと組んで2026年5月に実施したものです。米国、英国、フランス、ドイツ、韓国、日本、インド、オーストラリアの8カ国、1万6000人以上のクリエイターが対象になっています。ここでのクリエイターは、デジタルプラットフォーム上で月に複数回コンテンツを公開し、そこから収入を得ている個人を指します。従来のクリエイティブ産業でフルタイムに働く人は含まれていません[1][2]。グローバル版の結果は6月16日に先行して発表されており、今回は日本分の切り出しにあたります[2]。
数字を並べると、日本の位置づけがはっきりします。コンテンツ制作にクリエイティブAIを使っていると答えたのは全回答者の64パーセントで、グローバル平均の71パーセントを下回りました[1]。ただし利用者に限れば勢いは強く、84パーセントが1年前より使う頻度が増えたと答え、71パーセントが今後1年でさらに増えると見込んでいます。63パーセントは、すでに自分の仕事に組み込まれている、または積極的に活用している段階だとしています[1]。
事業面の実感も伴っています。AI利用者の81パーセントがビジネスまたはフォロワー基盤の成長が加速したと回答しました。グローバルでは同じ質問に87パーセントが同意しており、日本は6ポイント低い計算です[1][2]。ほかに52パーセントがクリエイターとしての自信が高まったと答え、39パーセントが将来への安心感につながったとしています[1]。
差別化の軸は量から視点へ
誰でも量産できる環境になった結果、埋もれる不安も出てきました。1年前より目立つことが難しくなったと答えたのは37パーセントで、その理由としてはコンテンツ量の増加が45パーセント、AI生成コンテンツの増加によって自作が埋もれやすくなったが38パーセントを占めています[1]。
その一方で、52パーセントはクリエイティブAIによって大規模な制作チームやスタジオと競争できる力が高まったと答えました。グローバルでは58パーセントです[1][2]。個人が設備と人手の差を埋める手段としてAIを見ている構図で、実際にAIを使った作品にも自分の視点が反映されていると答えた人は、仕事で活用している層の83パーセントに達します[1]。
ここに日本らしい強めの意見が出ます。創造的な感性や美意識、いわゆる審美眼といったクリエイターならではの個性は、AIでは完全に再現できないと答えたのは87パーセントでした[1]。AIの活用が前提になるほど、残る差は視点や判断のほうへ寄っていくという読みです。
速さは認めるが、仕上げは手放さない
制作スピードについては、93パーセントが役立つと答えました。この数字はグローバルと同水準です[1][2]。ただし下書きが早くできることと公開できる状態であることは別で、49パーセントがAIの出力は共有できる状態になるまでに中程度または大幅な編集が必要だとしています。グローバルの57パーセントより低い数値で、日本のクリエイターのほうが手直しの量を少なく見積もっている形です[1][2]。
より特徴的なのは信頼度のほうです。AI出力の精度を全面的に信頼していると答えたのは18パーセントにとどまり、グローバル平均の23パーセントを下回りました[1]。細部の詰めをAIに委ねず自分で作業する傾向が強い、というのがアドビの見立てです。効率化以外の効果としては、アイデアを提案する前に自由に試行錯誤できるようになったが36パーセント、より野心的な企画に挑む自信がついたが23パーセントとなっています[1]。
エージェント型AIは「戻せること」が条件
次の段階として注目されているのがエージェント型AI、つまり複数の手順を含む作業をまとめて実行するAIです。もっとも日本での浸透はまだ手前の段階にあります。63パーセントが「知らない」または「名前だけ知っている」と答え、55パーセントは利用経験がありません[1]。
それでも求める条件は具体的です。AIエージェントにより多くの自律性を持たせるうえで最も安心できる要素として、40パーセントがいつでも確認・編集・元に戻せることを挙げ、32パーセントがエージェントが何をしていてなぜそうしているのかの透明性、30パーセントがアクセスできるデータやツールの明確な制限を挙げました。グローバルではそれぞれ44パーセント、37パーセント、34パーセントです[1][2]。並び順は共通しており、自動化の範囲を広げること自体よりも、制御を握り続けられるかどうかが判断の分かれ目になっています。
信頼の積み上げ方にも違いが出ました。小さなタスクでまず確実な結果を出した実績を求めると答えたのは36パーセントで、グローバル平均の26パーセントを10ポイント上回っています[1]。いきなり大きな仕事を渡すのではなく、実績を見てから任せる範囲を広げる考え方です。
アドビ株式会社のJapan Chief Marketing Officerであるルイーズ・ニールは、日本の結果について「制作を加速させてほしい、しかし意思決定はしてほしくない、という姿勢」と表現しています。同社のFirefly AIアシスタントも作業の過程を可視化し、いつでも指示を修正できる設計にしていると説明しました[1]。空いた時間の使い道としては、20パーセントが新しい創作スキルの習得、19パーセントがより高度なクリエイティブの発想やディレクションを挙げており、作業を手放したい層ほど創作の核へ時間を寄せたいと考えていることがうかがえます[1]。
開示と著作権への関心
AI利用の開示については、78パーセントがオーディエンスの期待は高まっているか少なくとも変わっていないと答えました。ただし実践は揃っていません。常に、または頻繁に開示すると答えたのは49パーセントで、ほとんど、またはまったく開示しないという回答も19パーセントあります[1]。グローバルでも開示するのは49パーセント、しないのは18パーセントで、この項目はほぼ横並びです[2]。
権利面の関心は高く、クリエイティブAIの支援を受けて作成した作品について著作権保護を得られることが重要だと答えたのは88パーセントでした。グローバルは90パーセントで、こちらもほぼ同水準です[1][2]。生成物の扱いが定まらないまま利用が広がっている状況を、当事者の側も気にしているということでしょう。
まとめ
アドビの2026年版クリエイターツールキットレポートによると、日本のSNSクリエイターの64パーセントがクリエイティブAIを活用し、利用者の81パーセントがビジネスやフォロワーの成長が加速したと答えました。一方でAI出力を全面的に信頼するのは18パーセント、最終的なクリエイティブ判断は自分に残すべきという回答は86パーセントで、グローバルより慎重な線引きが見られます。エージェント型AIについても、自動化の範囲より確認・編集・取り消しといった制御の担保が重視されていました。
出典[1]:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000557.000041087.html
出典[2]:https://news.adobe.com/news/2026/06/creators-toolkit-report-2026
